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仙法志御崎公園よりの利尻岳 *
この画像は登山前日の8月8日14時頃に
上記の場所より撮影したものです。 |
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前日、投宿した鴛泊の旅館の主人の計らいで、利尻北麓野営場まで車で送ってくれるとのこと。鴛泊から野営場まで4kmの道のりだが、公共交通機関はなく、マイカーやタクシーで入るか、1時間かけて鴛泊から歩くかである。利尻島のタクシーは午前7時にならないと営業を開始しないそうで、残念ながらこんな時間では遅すぎて当てにならない。
利尻岳への現在の登山ルートは、鴛泊の町から入る鴛泊ルートと、鴛泊から十数キロ離れた沓形の町より入る沓形ルートの2つがある。現地で入手した情報では沓形ルートは降雨の影響で相当荒れているとのことで、また、早朝の現地までの足も確保できないことから、沓形ルートを登って鴛泊ルートを下山するという当初の計画は変更を余儀なくされた。こういう状況だったので、今回は鴛泊ルートを往復することにした。
早朝の4時に送って頂く約束をしていたので、3時半に目覚ましをかけて寝たが、体内時計のお陰で3時20分にはすっきりと目覚める。前日の夜、宿で用意して頂いたおにぎりを食べ、出発の準備をし、宿の玄関でご主人の登場を待つ。
しかし、どうしたことか、待てど暮らせど、いっこうに主人は現れない。約束の時間をもう10分も過ぎている。不幸なことに、宿の関係者は僕が投宿した棟には寝ていないようで人の気配がない。困り果てた僕は、とりあえず、宿に電話をかけてみることにした。すると、直ぐ横の電話が鳴り響くだけで、他に連絡するすべもなく、ホトホト困ってしまった。
これは海抜ゼロメートルより歩くしかないかな・・・と覚悟を決めていると、奥から宿の女将さんがもっそりと現れる。先ほどの電話のベルに反応したようだった。その後、女将さんがご主人を起こしてくれ、予定より20分遅れの4時20分に宿を後にする。あ〜、助かった。
野営場までは4kmの道のりだが、車なのであっという間に到着する。ご主人にお礼を言って、いよいよ登山開始である。時計は4時30分ちょうど、ヘッドランプを出すほどではないが、それでも辺りはまだ薄暗い。
野営場の標高は約220m、利尻岳北峰の標高は1719m、単純に計算しても標高差が約1500mあるので、結構タフな登高が強いられることが想像できる。僕は登りの時間が6時間、下りが4時間の計10時間ほどかかるとみて、これに山頂での休み時間や途中での小休止の時間を考えると、約12時間の行動であると予測した。宿を早朝の4時に出発することを決めたのもそのためだった。
本州の夏山のように登りは半袖で充分と思っていたが、朝起きた時のあまりの寒さにいきなりトレーナーを着込んでいた。朝の気温は12〜13℃位だったと思う。寒い訳だ。登山口の野営場から30分ほど登ると、うっすらとだが汗もかき始め、1時間ほど登った5合目で、暑さに耐えかね半袖になる。
5合目を過ぎた頃より、下から登ってくる登山者の話し声が良く聞こえてくる。男女のカップルのようだが、静けさを満喫しながら登っている僕には、失礼だが大変耳ざわりだった。それにしても、良く喋る二人で、僕は次第に不愉快になり、普段よりペースを上げて休憩もそこそこに先へと急いだ。
5合目を通過する頃より、あたりは霧に包まれてきて、視界はまったく利かなくなっていた。風も少しあり半袖でジッとしていると肌寒い。実は前日の天気予報では、今日の利尻島は曇りのち雨であった。登山の予備日を持たない僕には今日しか登る可能性は無く、天候が悪化したら引き返そう、行ける所まで行こうと心に決めていた。
前日、利尻岳に入った登山者に話を聞いたが、強風と霧で9合目手前の避難小屋で登頂を断念し引き返したと言っていた。今日も似たような天気に見えたので、これは登頂は無理かな・・・と思いながら先へ進んだ。
6合目の第一見晴台を通過する頃より、辺りが明るくなってきた。上を見渡すと、霧の晴れ間から先のピークが見え隠れする。同時に風もなくなりだし、次第に暖かくなってくる。
稜線上のルートに生い茂るクマザサが凄く、衣類の濡れを懸念して上下雨合羽を着込んだが、8合目付近で、蒸れる暑さにたまりかねて雨合羽を脱いで再び半袖姿になる。
「9合目、ここからが正念場」の道標を見ながら、足場の悪いガレを息を切らしながら一気に登ると、頂上に立つ神社が目に入ってきた。幸いにも霧は晴れ、上空には青空も見えてきた。僕はこの青空にエネルギーをもらい、最後の力を振り絞って一気に頂上まで登り詰めた。ついに念願の利尻岳山頂に到着した。 |