Vol. No. 19 annex 2003.10.18 upload
GPSレシーバ試用レポート
左側は制御用PC、右側がGPSレシーバ
 米国のCDMA携帯電話の基地局用に設置されていたGPSレシーバ(HP Z3801A)が中古市場に大量に放出された。早速、その1台を取り寄せ試用してみた。インターネットで注文した所、5日後には手元に到着し、あまりのスピーディーさに少々ビックリ。レシーバ本体(Z3801A)が$249、専用のACアダプタが$59、GPSアンテナが$24.95、送料が$79の計$411.95であった。これ以外に、輸入品の消費税として2,300円を別途輸入業者に支払った。

 左の写真の右側に写っている白い色の装置がGPSレシーバである。左側のノートPCは、GPSレシーバの制御用として、別途、オークションで入手した中古品である。元々、このレシーバはラックマウント用なので、フロントパネルはもう少し横長で大きかったのだが、収納スペースの関係もあり、本体の幅に合わせて自らカットした。
GPSレシーバの内部
左上部の白いボックス部がOCXOだ。
 このGPSレシーバを使えば、内蔵された10MHzのOCXO(Oven Controlled Xtal Oscillator - 温度制御型水晶発振器)をGPS衛星からの1PPS信号(1秒毎に1回発生するパルス信号)を基に補正し、10-9以上という超高精度な10MHz出力が得られるのである。もちろん、このレシーバを使って表示される補正後の時刻も超正確である。

 少し厄介なのはレシーバに搭載されている通信ポートがRS422仕様だということである。このままでは身近なPCでは制御不能なので、RS232Cへの改造が必要となる。幸い、改造の諸情報はインターネット上の多くのウェブで紹介されているので、その指示に従う限り、ハンダごてを使える人なら、改造に特段の問題はないだろう。

 尚、レシーバのケースには特殊な形状のビスが使われているので、あらかじめ、この形状に合ったドライバを用意する必要がある。
GPSレシーバのリアパネル
上段左端がアンテナ入力、隣が10MHz出力、右端はDC入力
下段左端がシリアル通信ポート
 レシーバの背面はアンテナ入力(N-Female)、10MHz出力(BNC-Female)、直流電源入力(専用コネクタ)、通信ポート(D-sub 25pin)の4つだけのシンプルな構成だ。

 背面にはHP社の校正証明を示すラベルが貼付されていたが、もちろん、とうに有効期限は過ぎていた。(このレシーバ自体は校正の必要はないというのが一般的な解釈である。)
GPSアンテナ
届いたのは日本製の新品だった・・・
 レシーバの本体と共にどんなGPSアンテナが届くのか興味津々だったが、届いたのは何と日本製の新品だった。形状から恐らくカーナビ用に開発され輸出されたものだと思われる。このアンテナへはレシーバ本体から直流5Vの電圧が供給される。アンテナを見た所、どうも防水構造ではないように思えたので、屋外に設置する前に、ホームセンターでアクリル製の容器を調達し、この中にアンテナを収納して防水構造とした。
制御ソフト HP SatStatのStatus画面 (拡大画面
上の画面では6ヶのGPS衛星を捕獲し、2ヶのGPS衛星が待機状態で
あることを表している。
設置場所の緯度と経度も、小数点以下3桁の秒単位まで表示される。
また、高度も表示されるが、こちらはあまり正確ではないようだ。
 さて、いよいよ動作させる時が来た。購入した際に同梱されていたHP社のSatStatという制御ソフトをDOS/Vマシンにインストールし、RS232CケーブルでPCとレシーバを接続する。ケーブルはクロス結線と称して売られているものを使用した。ストレート結線と称されているケーブルでは、送受信の信号が衝突してしまい、制御できないので要注意である。以上、サラッと書いてしまったが、実際はこの結線のところで結構な苦労をした。

 ソフト上のプロトコル設定を定められた通りに設定し、通信ポートをオープンすると、PCの画面上に左で示すStatusの画面が現れる。初回のみサーベイコマンドというのを実行し、位置を初期化しないと動かない。従って、この初期化前のStatus画面には、このレシーバが最後に使用されていた緯度経度が表示されている。試しにこの表示されていた緯度経度を調べた所、米国のインディアナポリス市の近くに設置されていたものであることがわかった。
GPSレシーバのフロントパネルのLED群
人工衛星を捕獲中(GPSを Lock on中)
 1ヶ以上のGPS衛星を捕獲し、レシーバがLock onすると、フロントパネルのGPS LockのLEDが点灯する。この状態でソフト画面上のFFOMの値がゼロになると、10-9以上の超高精度な10MHz出力が得られる。最初に電源を投入した際は、この状態になるまで2時間ほどを要する。なお、衛星の捕獲が外れている時は、HoldoverのLEDが点灯し、同精度は一時的に劣化する。
HP SatStatでの超正確な時刻表示(HH:MM:SS)
 HPのSatstatソフトは、PC上でローカルタイムを表示させることもできる。左に示す時計の画面がそれで、1秒刻みだが超正確な時刻を刻んでくれる。
レシーバの10MHz(100ns)正弦波出力
1x10-9以上の精度
 左の画像は、レシーバの10MHz出力を、オシロスコープで観測した際のものである。仕様書通り、50Ωの負荷に対して1.9Vp-pの10MHzの正弦波が出力されていることが判る。左の画像は入力インピーダンス1MΩのオシロスコープで測定しているので、波高値は1.9Vの倍の3.8V表示となっている。
GPSアンテナへは直流5Vがレシーバより
同軸線を経由して供給されている。
上記はその電圧を実測した際のものである。
 GPSレシーバからGPSアンテナへは、50Ωの同軸線を経由してDC 5Vが供給されている。左に示した画像は、T分岐とDMMを使用して、実際にその電圧値を測定した際のものである。(5V 50mA nominal)
GPSレシーバのブロック図
 さて、これで目的が終わりなら何と高価な遊びだろう(爆)。正確な時刻を手に入れる為だけに5万円もの大枚を叩いてレシーバを入手する人は滅多にはいないだろう。実際にはこのレシーバから出力される超精密な10MHz出力を、周波数カウンタや波形測定器などの各種周波数測定器に入力し、その測定器の周波数測定精度を向上させる為に使われる。

 10年ほど前なら、このようなシステムを実現するのに、確実に50万円以上の投資が必要だったが、このような中古品が放出されたことで1/10程度の予算で容易に実現可能になった。これも一重に携帯電話が普及したことの恩恵なのだろう・・・。

 なお、ここでご紹介した製品は米国Hewlett Packard社(Agilent Technology社に分社)が開発したものだが、同社はすでにこの事業から撤退しており、現在では同製品は取り扱っていない。
Specification and Characteristics
GPS Receiver Features
  Six-channel, parallel tracking GPS engines     
10MHz Output Characteristics
  Frequency Accuracy: <1x10-9, one day average
  Waveform: Sine wave, 1.9Vp-p into a 50Ω load (typical)
  Source Impedance(nominal): 50Ω
  Coupling: AC
  Connector: BNC
1PPS (One Pulse Per Second) Output Characteristics
  Jitter of leading edge: <200nanoseconds between pulse
  Accumulated time error: <7 microseconds per day
  Waveform: Pulse width 10 to 50 microseconds
  Time Accuracy: < 1 microseconds (Locked to GPS)
  Connector: DB-25
Antenna
  Power Requirements (supplied by Z3801A): 5 Volts nominal, 50mA max.
Remote Interface (Port 1)
  RS-422 DTE configuration
  Baud Rate: 19200-7data bits, 1 start bit, 1 stop bit, odd parity
  Connector: 25-pin female D subminiature (DB-25)
Environmental
  Operating: 0℃ to +50℃
  Power BTS: +27Vdc nominal, BSC: -54Vdc nominal
  Input power (BTS and BSC): < 25Watts(nominal)
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