Vol. No. 9 2002.01.26 upload
テレビやパソコンからも電波は出ているの?
 結論から先に言いますと、テレビやパソコンからも電波は漏れ出ていますし、これらに限らず、多かれ少なかれ、多くの電気製品から電波は出ていると思って良いでしょう。もちろん、これらの電波は意図して発射されているものではありませんので、妨害電波、電磁ノイズ、電波雑音、不要電波などと言われています。いわゆる、その名前から嫌われ者だということがおわかり頂けるかと思います。

 そもそも電波雑音というものは、表9-1に示すように、自然現象に伴って発生する自然雑音と、電気製品などから発生する人工雑音との2つに大別できます。

電波雑音 自然雑音 大気雑音 (雷放電、火山)
太陽雑音 (太陽、惑星)
宇宙雑音 (銀河、星雲)
人工雑音 火花放電 (自動車のイグニッション、リレー、電気こたつ)
グロー放電 (蛍光灯、ネオン灯、水銀灯)
コロナ放電 (送電線)
持続振動 (電子レンジ、高周波医用設備)
電子回路 (パソコン、OA機器、デジタル家電製品))
表9-1 電波雑音の種類と発生原因

 これらの電波雑音にはそれぞれに特徴がありますが、そのすべてをこの章で説明することはできません。そこで、この章のタイトルでもあるパソコンを例に上げて、電波雑音の発生メカニズムを説明します。

 先ず、図9-1で示すように、導線に電流を流すとその周りに磁界が発生します。これだけで見方によっては電波雑音が発生したことになります。私達の家の中には100Vの電圧の電線が配線されていますが、ここに電流が流れれば磁界が発生します。また、パソコンやテレビなどの電気製品の電源線などからも磁界は発生します。しかし、発生する磁界の周波数は極めて低い為、テレビやラジオなどの受信機にそれほど深刻な影響は及ぼしません。

図9-1 磁界の発生

 次にパソコンの内部(回路)はどうでしょう。最近のパソコンは極めて処理スピードの速いマイクロプロセッサ(中央処理装置)が搭載されています。ペンティアム4 1GHz搭載とかいうのがそれです。例えば、この1GHzのCPUは図9-2に示すような波形で動いています。この記事を書いている私も1.5GHzのペンティアム4が搭載されたパソコンを使っています。

図9-2 クロック波形

 この高速の信号が様々な電波雑音を出す大きな要因になっています。細かな説明はまたの機会に譲りますが、図9-2で示したようなパルス波の場合、様々な周波数の成分を含んでいます。おおざっぱに言いますと、1GHzのクロックの場合、3GHz、5GHz、7GHz、9GHz・・・と奇数倍の高調波という成分を含んでおり、回路の条件次第ではこれらの周波数の電磁波がパソコンの外部に放射されてしまいます。

 それではどうして電気回路から電磁波が放射されるのでしょうか。図9-3に電磁波放射までのメカニズムを簡単に示します。(a)は2枚の金属板を対向させて、そこに直流電圧を加えた様子を示しています。金属板の上部には正の電荷が、下部には負の電荷が蓄えられ、電極間には静電界が生じます。しかし、電極間は絶縁されている為、電流は流れず磁界は発生しません。

 次に(b)のように、電極間に高周波電圧を加えると、電極間の静電容量のために電流(変位電流と言います)が流れ、(b)と(c)の状態を繰り返します。その結果、点線で示した磁界が発生します。

 次に(d)と(e)に示すように、この電極を少しずつ開いていきますと、(f)に示すように電波が空間に放出されます。

図9-3 電磁波放射のメカニズム

 もちろん、パソコンの内部では意図して電波を放射している訳ではありませんが、特にプリント基板の導体や様々な電気配線が、図9-3 (f)のように作用してしまい、ここから不要電波が放出されるという訳です。

 なお、世界の主要な国では、テレビなどへの電波妨害を軽減する目的から、これら不要電波は一定の量以下にすることが定められていますので、皆さんが市場で購入されるパソコンのほとんどは、これらの規制をクリアーしたものです。この不要電波の規制の詳しい話はあらためて別の章でご説明したいと思います。
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