トライアル世界選手権 in もてぎ
Vol. 28
2007/6/2
各選手がエントリー順に紹介される
 2007年6月2日と3日の両日、ツインリンクもてぎにて、2007 FIM SPEA トライアル世界選手権シリーズ 第4戦(ウイダー日本グランプリ)が開催された。初日の6月2日(土)、観戦に行った。

 トライアル競技をこの目で見るのは生まれて初めてだ。ルールもまったく知らない素人の観戦だ。先月の5月14日、もてぎでのドライビングスクールに参加した際、オーバルコースに大きな岩が持ち込まれ、クレーンでなにやら作業をしていたのを目にしたのが、そもそものきっかけだった。面白そうなので、一度見に行ってみようと相成った次第である。
 当日は汗ばむ程の陽気で、直射日光を浴びていると、かなり暑い。ここで、素人の私ではあるが、受け売りで、トライアルの概要を紹介しておこう。

 トライアルはセクションでの減点とタイムコントロールで勝敗を決する競技だ。スタートからゴールまで走りきるのがまず大前提で、世界選手権の持ち時間は5時間半、これを1分超過する毎に1点減点となる。

 セクションでの減点は足を1回つくごとに1点減点、3回以上は何回でも3点、転倒、コースからの飛び出し、後退などは5点減点。なにも減点がないとクリーンとなる。
セクション1(特設ゾーン)
セクション1(特設ゾーン)
 今回の選手権ではツインリンクもてぎの敷地内に計15箇所のセクションが設けられており、競技はセクション1から開始され、一つのセクションでの競技を終えた選手は次のセクションへと一人ずつ移動していく。15のセクションを持ち時間である5時間半の間に2回まわるので、計30のセクションでの減点で勝敗が決まることになる。

 先ずはオーバルコースのピットロード上に設けられた特設のセクション1から競技が開始される。あんな垂直の岩、どうやって登るんだろう・・・と思わせるコースだ。ここを世界ランキング上位の選手は、見事なテクニックでいとも簡単に越えていくのだ。スゲ〜! としか表現のしようがない。
 セクション1〜15までのルート全長はおそらく5〜6kmはあると思われ、徒歩ですべてのルートを見て廻るのはかなり難しい。だから自転車持参の観戦者も結構いる。また、ビックリしたのはかなりの人が脚立持参で来ていたことだった。

 トライアルは間近で見られるが、人集りしてしまうので、前のほうにいないと良く見えない。だから脚立持参という訳だ。
セクション11(全景)
セクション11
 トライアルの主役はもちろんライダーだが、各ライダーにはマインダーと呼ばれる女房役が随行している。マインダーはライダーとは色違いだが同じゼッケンをつけているので直ぐにわかる。

 選手に指示を与え、好成績を挙げる為のいわゆるサポート役だ。また、マインダーはこれ以外にも、登りそこねたマシンをつかみ、身を挺してライダーを助けるのも役目だ。観戦中、この光景を幾度も観た。マインダーがいなければ、ライダーが大けがをするであろう場面も何度かあった。まさに縁の下の力持ち的存在で、選手との一体感を強く感じた。
 トライアルは直ぐ近くで観戦できるので、タイヤが跳ね上げた泥をもらうこともある。それ位、至近距離で観戦できるのでなかなか面白い。

 また、ライダーはパイロット型のヘルメットを装着しているので、緊張したり集中したりする選手の表情も手に取るようにわかる。失敗したりすると、大声で何かわめいている選手もいたりして、感じる迫力にも拍車がかかる。
セクション8
藤波貴久選手
セクション4
 観戦に来ている人の多くは、2004年に世界チャンピオンとなった、日本が誇る藤波貴久選手がお目当てのようだ。藤波選手の競技になると、応援のボルテージも上昇する。

 藤波選手は三重県の出身だが、現在はスペインに住んでいるそうで、今回のマインダーもスペイン人のようだった。(マインダーとの会話のやりとりを聞いたが、スペイン語を喋っていたので、少々ビックリした。)
 セクション5で1時間ほど観戦していたが、選手は最後の登りでことごとく苦戦、減点5をもらっていた。あんなところ、誰も登れないんじゃない? と思っていたが、藤波選手をはじめとした世界トップランカー達は、観戦者に難しさを感じさせないスムーズな動きでいとも簡単に登っていってしまった。これにはさすがにビックリ。素人にはわかる筈もないが、やはりテクニックが違うんだな・・・と感じた次第だ。
セクション5(スタート位置)
スタート前に集中する藤波選手
セクション5を駆け上がる藤波選手
 セクション5は傾斜のきつい土の登り坂で、スタート地点からフルスロットルで上がっていく様は結構な迫力だった。

 ここで見ていた私は、ゼッケン13の黒山健一選手(28歳)の、スタート前の気迫と表情がとても気に入った。2回目のセクション5は登り切っていたと記憶している。

 黒山健一選手の公式ウェブ
 16時もまわり、最終グループのランキング上位の選手が、最後のセクション15に入ってきた。この時点で、藤波選手は4位、このままだと表彰台は逃がしてしまう。

 3位の選手が、競技最後の難関である滝上りに入り、皆が注目する。しかし、残念ながら、ここを上り切れずに減点5となる。この時点で、次の藤波選手が上りきれば3位入賞は確実である。会場は盛り上がり、皆が固唾をのんで藤波選手の動きに注目した。
セクション15
黒山健一選手
セクション15
3位入賞がかかった最後の滝上り
(藤波選手)
 そして、下の岩をジャンプ台にして藤波選手のマシンは勢いよく飛び上がった。左の写真はその瞬間を捉えたものだ。そして、後輪を残していたが辛うじて上り切ったのだ。と、同時に会場内からウオー!という歓声。僕も思わず「やった〜!」とガッツポーズをとっていた。いや〜、見ていて鳥肌が立っちゃいました(笑)。
 優勝したのは、「驚異の新人」と異名をとるスペインのアントニオ・ボウ選手(20歳)。ほとんどの選手がここを上れず減点5を食らっていたのに、いとも簡単にクリアーしてしまった。簡単に見えてしまうってことは、それだけテクニックが凄いということだろう。
セクション15
優勝したアントニオ・ボウ選手の
滝上り
入賞した3選手
優勝のアントニオ・ボウ選手(中)、2位のアダム・ラガ選手(左)、3位の藤波貴久選手(右)
 17時過ぎに表彰式が行われ、藤波選手が表彰台に上がった。観戦している日本人としては嬉しい締めくくりだった。

 僕が気にいった黒山健一選手も、この日は9位と大健闘、よかったよかった。
初日の結果
エンジェル
セクション1で競技中の黒山健一選手とマインダー
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