2001年2月20日作成
 ここでご紹介するのは、僕が愛用あるいは携行していた岩登りの道具です。20年以上もの長きに渡って、陽の目を見ることもなく、ずっと押入の奥で眠っていたものです。すべて当時のものですので、現在使われているものとは多少異なるものもあろうかと思います。その点をご留意の上でご覧下さい。
■ボルト
 支点を確保したいが、岩に割れ目などが全く無くハーケンが使えない時などに使用します。色々な形状や大きさのものがあります。使い方は、まず、「ジャンピング・セット」と呼ばれるドリルのような道具で岩に穴を開けます。一つの穴を開けるのに10分以上かかることもあります。次にその穴にこのボルトをハンマーで打ち込みます。打ち込まれたボルトは、先端に付いているクサビ状チップでボルト自身の先端が広がり、岩に固定されます。なお、一度打ち込んだボルトは二度と取り外すことは出来ません。
ボルト(リング直径5cm)
■ハーケン
 支点を確保する為に使用します。色々な形状や大きさのものがあります。ハンマーで岩の割れ目に打ち込んで使用します。「ハーケンが鳴る」と言いますが、馴れてくると、打ち込む時の音で、そのハーケンがしっかりと岩に食い込んでいるか、そうでないかを判断できます。見ての通り回収可能な構造ですが、しっかりと打ち込まれたものは、そう簡単には外れません。ハーケンの先端は岩に比較的柔らかく出来ているので、たとえ回収したとしても、その多くは変形してしまいます。
ハーケン(全長10cm)
■エイトカン
 文字通り、形が八の字状であることからその名が付けられています。用途は色々ありますが、一つは懸垂下降時に使用します。もう一つは、確保時の制動用に使用します。もちろん、このエイトカンを使用しない懸垂下降法や確保法もあります。
エイトカン(幅14.5cm)
■カラビナ
 左の写真の右側のカラビナは主に自分の体とザイルを結ぶ時に使用します。一番重要な接続点ですので、簡単に外れないように、ロック機構がついています。写真の左のものは一般に登攀時の確保用支点に取り付けて、ザイルを中に通して使用します。何れも軽量化からアルミ製です。(左はイタリアのRONAITI製、右はフランスのCHARLET製です。)
カラビナ(左側高さ11cm)
■ハンマー
 当時、使用していた登攀用ハンマーですが、今はこのような木の杖のものは使用していないと思います。ハンマーのとがっているほうは、打ち込んだハーケンを回収する時などに使用します。(さかいや製)
登攀用ハンマー
■ヘルメット
 特に説明はいらないと思いますが、登攀専用のヘルメットです。前後についているひも(ゴム)は、ヘッドランプを固定する際に使用します。(Galibier, made in France)
ヘルメット
■ゼルブスト(ハーネス)
 これは下半身だけのタイプで、Sit Harnessと言います。全身用のものもあります。体とザイルを繋ぐ際に使用しますので、いわば一番大事な命綱のようなものです。(Whillans Sit Harness by Troll, made in England)
ゼルブスト
■笛
 岩壁登攀では、パートナーが見通せないケースも多くあります。そのような時は、大声を出しても以外と相手に届きません。パートナーとの意気が合わないと、深刻な状況にもなり得ます。声が届かないような時は、あらかじめ決めておいた決まりで、笛を使って意志の疎通をはかります。(The Acme City, made in England)
■ナイフ
 用途は様々ですが、何があるかわかりませんので、ザックの中にはしまわずに、登攀中すぐに取り出せるようにしておくべきでしょう。ケースによっては、ナイフが無かった為に命を落とす、なんてこともあり得ない訳ではありません。幸か不幸か、僕は登攀中にナイフを使った経験はありません。
ナイフ
■捨て縄、シュリンゲ
 用途は色々ありますが、岩に打ち込んだハーケンに直接カラビナをかけるのではなく、このようなロープを概してカラビナをかけることが多くあります。目的は、ザイルの摩擦をできるだけ低減する為です。また、岩壁を懸垂で下降する場合、支点にこれを取り付けてザイルを通します。この場合、使用したロープは回収できませんので、この場合は捨て縄と呼びます。何れにしても、全体重がこれに加わる使い方をしますので、少なくとも数百キログラムの重量に耐え得るものでなければなりません。
捨て縄、シュリンゲ