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途中の山小屋で仮眠する |
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この山行は所属していた山岳会とは関係ないものだった。当時、僕の働く職場で富士山に行きたいという女性達がおり、山をやっていた僕に白羽の矢が立ってしまったのだ。
彼女達は皆うら若き乙達であり、せっかく行くのなら、楽しく行こうと、僕の友人達に声をかけ、結局は5人+5人の10名で行くことになった。
正直に言うと、僕は夏の富士登山など、まったく興味はなかったのだが、水をさすようなことも言えないので、二つ返事で引率役を引き受けたのだった。
5合目まで2台か3台の車に分乗して入り、懐中電灯の灯りを頼りに登り始めた。何合目だったか忘れたが、途中の山小屋で仮眠をとった。
9合目あたりでご来光を拝んだが、この頃より僕は絶不調になる。吐き気をもよおして来たのだった。完全な高山病だったが、メンツもあるし格好悪いので、青い顔をしながらも黙って我慢していた。
そうこうしているうちに、何とか山頂にたどり着いた。皆、嬉しそうにはしゃいでいた。僕はそれどころではなかったのだが、平静を装っていた。まあ、喜んでくれたのが、せめてもの慰めだった。
夏の富士山なんか二度と登らないぞ、と思いながら、砂走りを駆け下りたのだった。
ということで、後にも先にも富士山山頂まで登ったのはこの時だけだった。 |