|
5合目の佐藤小屋にて |
|
|
僕の入っていた山岳会が加盟していた山岳協会の主催で、冬山講習会が催された。既に丸5年の冬山経験はあったが、それまでに修得した技術のほとんどは、会の先輩からの指導と、雑誌や解説書から得た知識であった。この頃、僕は会の指導的な立場に成りつつあった事から、自分の技術を再確認する良いきっかけだと考えて、参加することにした。
指導してくれるのは、日山協の指導員の資格を持つ2名の先生方であった。当初、谷川岳での開催を予定していたが、ロープウェイが故障していたことと、参加者が少なかったことで、急きょ、その場所を富士山に移した。受講者は僕を含めて4名のみであった。
10日の夜、車2台に分乗して、馬返しまで入る予定だったが、前日の降雪で、浅間神社より先には行くことができず、この日は佐藤小屋のご主人宅に泊めて頂いた。
次の日の早朝、何とか車で馬返しまでと頑張るが、雪で中の茶屋までしかいけず、結局はここから5合目まで歩くことになってしまう。とんだ誤算で、5合目に到着したのは午後の3時頃になってしまう。「この日の講習は止めましょう」ということになり、佐藤小屋に宿泊する。
翌、日曜日は良く晴れていたが、風速20mほどの強風が吹き荒れていた。それでも、吉田大沢で練習を開始する頃には、風も次第に納まってきた。予定が大幅に狂ってしまったので、この日の講習は、滑落停止訓練と、ザイルワークに的を絞って行って頂いた。ここで教わった滑落停止は、例えば、仰向け状態や頭を下にした滑落状態から停止させるなど、普段我々が行っている練習よりは遙かに実践を意識しての訓練であり、大変参考になった。
また、ザイルワークは、コンティニアス(ザイルをつないだまま両者とも同時に歩行すること)およびスタカット(ザイルをつないで、1名が登高し、他の1名が確保姿勢をとること)でのビレイ訓練を行った。特に、コンティニアスでの新しいビレイ方法は大いに参考になった。約5時間の練習であったが、僕にとっては大変密度の濃い講習会となり、参加して良かったとあらためて感じた次第である。
この講習会で、僕のヤッケはザイルの摩擦で見事に焼けただれてしまったのである(左の写真)。今でも、この時のヤッケの焼け焦げた跡を見るたびに、当時の講習会を思い出すのである。 |