2001年10月27日 作成
南アルプス 北岳バットレス
第一尾根 登攀
1977(S52)年5月2日〜5日
5月1日 立川〜(電車)〜甲府
5月2日 曇り 甲府〜(タクシー)〜夜叉神〜(徒歩)〜広河原〜大樺沢〜BC
5月3日 BC〜第四尾根登攀〜北岳〜八本歯のコル〜BC(Y氏&S氏)
5月4日 曇り時々小雪 BC〜第一尾根登攀〜北岳〜八本歯のコル〜BC(Y氏&小生)
5月5日 BC〜広河原〜甲府〜立川
メンバー: 山口(CL)、渡辺(SL)、島野
※山行計画書&報告書なし
北岳バットレス 第一尾根(商大ルート)
(古いデータ故、参考程度に留めて下さい
 山を始めて6年目の5月に、4人で北岳バットレスに行くことになった。うち一人は、仕事の都合で一日遅れて入山するとのことで、僕たち3人は、先に現地入りすることになった。

 広河原まで車で入る予定であったが、まだ道路が開通しておらず、僕らは仕方なく夜叉神より広河原まで歩かされることになった。いきなりの大誤算で少々面食らったがどうしようもない。広河原からは大樺沢を登り、残雪が切れた地点にBCを設営した。

 翌日はバットレスの第四尾根を登攀することになったが、僕は3年前に既に第四尾根を登っていたことと、これから来るであろう友人を待つため、終日テントキーパーをすることにしたので、第四尾根は先輩のYさんとS君の二人で登ることになった。そして、彼らは無事登攀を果たし、BCに帰ってきた。しかし、八本歯からの下山中、S君はグリセードができなかった為、シリセードで降りてきたらしいのだが、途中、雪面から露出していた岩にお尻を強打し、苦しそうな顔で帰ってきた。

 この日、僕はBCで昼寝をしたり、近くを散歩したりして友人を待っていたが、結局、彼は来なかった。次の日は3人で第一尾根を登攀する計画だったが、S君は前日、岩に強打したお尻の調子がかんばしくないらしく、結局、先輩のYさんと僕の二人で登攀することになった。

 BCより第一尾根取付を目指して登行を開始する。バットレス沢からBガリーをつめることにする。ここはかなりの急登だ。特に、残雪が多く残っていたので、45〜50度ほどの雪面を、時にスタンスをカッティングしながら慎重に進む。この時、既に先行パーティ1組が我々の上を進んでいた。と、その時だった。上のほうでガラガラガラと落石の音がした。上を見上げると、人の頭ほどの石が何個も我々めがけて、もの凄い勢いで急な雪面を転がってきた。

 僕らは斜度50度ほどの雪面を登行していたので逃げることもままならず、転がってくる岩を見定めながら、その場で身をかわすしかなかった。それでもかわしきれないと判断したのか、先輩のYさんは背負っていたザックを手に持ち、それを盾代わりにして襲ってくる岩をかわしていた。そのうちの一つがザックに激突したが、幸いYさんは無事だった。ザックを盾に使ったのは賢明な判断だったようだ。仮に頭にでも当たっていれば、本当に即死するところだった。

 注意はしていても、山で落石を誘発することは良くあるが、不幸にしてそうなった場合は、「落(らく)〜」と大声を出して、下にいる者に危険を知らせるのが最低限のルールだ。この時の落石の真の原因は判らないが、発生場所からして先行パーティーが誘発したものだと推測された。しかし、先行パーティーからは何の警告も発せられなかった。まったく無礼な連中だ。下手をすれば命を落としかねない事態だったので、後で追いついたら一発パンチを食らわしてやろうと考えながら、急いで急登を登っていった。

 さて、雪面の急登も終わり、第一尾根基部に到着した。登攀具を装着し、僕らはガリーをたどる商大ルートを登ることにした。そして、僕がトップで登り始める。当時の登攀中の写真があまり無いのは残念だが、多分、そんな心の余裕は無かったのだろうと思う。取付から3ピッチで、赤褐色のアンサウンド・バンドに到着する。ここより左へトラバースし、主稜上の大テラスに出る。ここからの第四尾根の眺めはなかなか良かった。第四尾根に取り付いているパーティーの様子がつぶさにわかるのだ。小休止後、登攀を再開するが、この頃より小雪が舞い始める。左右が切れ落ちた主稜上のナイフリッジを慎重に登り、オーバーハングの下のギャップに出る。このオーバーハングを乗り越し、さらにハイ松のリッジを登って、登攀終了点に到着した。大テラスから確か3ピッチだったと思う。その後、ハイ松帯を登り、北岳山頂に到着する。

 山頂でYさんと握手を交わし、八本歯のコルに向け下山を開始する。ここより大樺沢を下ることになるが、まだ残雪が多いので、コルよりグリセードにて一気に下る。この時のグリセードは完登した達成感もあってか爽快そのものだった。

 BCに到着後、周りが何か慌ただしいのに気付く。何だろうと思っていると、上部より救助用タンカーを引っ張りながら5〜6人のパーティが降りてきた。聞けば、バットレス中央稜で転落事故が発生し、遺体を搬送している最中だった。亡くなった人には申し訳ないが、嫌なものを見てしまったと思ったが、登攀終了後だったのでまだ良かった。この日はBCで完登の喜びを3人で分かち合い、翌日、広河原経由で帰路についた。 
第1尾根登攀開始点にて
ピッケル背負っての登攀です。当時24才。
何とむさ苦しい顔・・・。結構寒かったです。
アンサウンド・バンドより正面壁を望む
(中央に1パーティが取り付いている)
第一尾根途中より第四尾根を望む
(数パーティが登っているのが良くわかる
上部ハイ松帯にて、背後は大樺沢
(視界が悪いのは小雪が舞っているためだ。)
登攀を終え北岳山頂にて
八本歯コルより大樺沢上部をグリセードで
一気に下る
大樺沢上部にて
大樺沢上部にて
(背後はバットレスです)
北岳ってどこにあるの?
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