2001年8月4日 作成 | ||
南アルプス 赤石沢 遡行 | |
1975(S50)年8月13日〜16日 | |
■赤石沢周辺図 | |
■赤石沢核心部ルート図 | |
8月13日 | 静岡〜畑薙第一ダム〜赤石沢橋〜赤石沢出合〜ニエ廊下途中 (幕営) |
8月14日 | ニエ廊下途中〜北沢出合〜ねじれ(クズレ)沢出合〜大雪渓沢出合 (幕営) |
8月15日 | 大雪渓沢出合〜裏赤石沢〜赤石岳(3120m)〜大倉尾根〜椹(さわら)島 (幕営) |
8月16日 | 椹(さわら)島〜畑薙第一ダム〜静岡 |
メンバー: 山口(CL)、渡辺(SL)、尾形、島野 | |
会費(交通費/食料費): \10,000/一人 ※山行計画書有り | |
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この年の夏は、初めて南アルプスの沢遡行に挑むことになった。そのターゲットに選んだのは、赤石岳の麓に広がる赤石沢だ。地図で見る限りでは、全長7〜8kmにおよぶ壮大な沢で、大井川の源流の一つでもある。また、この沢は「赤石岳」銘々のもとになった「赤い岩床」があることでも有名だ。 残念ながら、この時の山行報告書が残っていないので、細かな遡行記録は判らないが、手元に残っている計画書を頼りに、思い出せる範囲で記すことにする。 金谷、井川経由で畑薙第一ダムまで入り、ここより椹(さわら)島までの車道を6時間かけて歩いて、赤石沢出合に到着した。 いよいよ、ここより遡行開始だ。この山行では地下足袋+ワラジを用意してきた。沢歩きではワラジに勝るものはない。なんと言ってもワラジは、コケの生えた岩の上などに乗っても滑りにくいのだ。ということで、この山行では軽量化の為、あえて登山靴は持参しなかった。沢の出合で運動靴から地下足袋+ワラジに履き替える。 出合から少し入った所で岩魚釣りの二人連れに出会う。挨拶を交わし、先を急ぐ。出合から数時間進んだニエ廊下の途中の左岸の岩小屋風のところにツエルトを張って一夜を過ごす。 二日目は、驚きの連続だった。時には、へつることもままならず、滝壺の中を泳いで進んだり、数百メートルも高巻いたりした。僕らが入山した時は、どうも水量は多いほうだったようだ。それにしても、丹沢の沢登りとは比べようもなくダイナミックな沢だ。時には緊張しながらも、沢歩きを満喫しながら進んだ。二日目は大雪渓沢出合付近で幕営することになった。水が流れる心地よい音を聞きながら、いつしか眠りについてしまう。 沢に入って三日目を迎える。沢の出合で釣人に会って以来、この2日間というもの他の誰にも出会っていない。つくづく山の深さを痛感する。さて、いよいよ今日で沢遡行も終わる予定だ。赤石沢の最後は百聞洞までツメるのが一般的だが、下山の事も考えて、僕らは赤石岳への最短コースである「裏赤石沢」をツメることにする。この沢をつめれば、赤石岳近くの稜線に出るはずだ。 ほどなく、裏赤石沢とおぼしき沢に到着し、迷わずこの沢を登ることにする。途中、沢の水もなくなろうかという源流で、わき出す水を飲んだが、水がこんなに美味しいものだとは思わなかった。ほんとうに美味しかったのだ。そして、この沢をツメるにつれ、裏赤石沢の様子とは少し異なり、どうも沢を間違えたらしいことに気付く。しかし、ここまで来て引き返す気にもなれず、強引に進むことにした。ところが、途中でとんでもないブッシュに遭遇し、悲惨な藪漕ぎ(道のない藪の中をかき分けて進む様)を強いられる羽目になってしまう。 上に向かって進めば、いつしか稜線に出るだろうと、露出する腕に無数のひっかきキズをつけながら、道なき道を強引に進むと、幸運にも赤石岳直下の稜線に出ることができた。こんな所を歩いた人もそうはいないだろう。ともかく、体中ひっかき傷をつくりながらも、全員無事に赤石岳山頂に立つことができた。 この後は、大倉尾根を一気に下り、椹(さわら)島の河原でテントを張る。ここで夕飯を作っている時、僕らがともしている灯りを目指して羽アリの大群に襲われることになる。とにかく想像を絶するほどの羽ありアリの大群で、とても食事どころではなかった。仕方ないのですべての灯りを消して、真っ暗闇の中で飯をかき込んだのだった。 最終日は、畑薙第一ダムまでの長い長い林道を歩き、ダムからバスで静岡にでて、新幹線で帰路についた。この時、同行した仲間の中に持参した運動靴をダメにした者がいて、仕方がないので、彼は素足にワラジを履いて新幹線に乗り込んだのだが、案の定、周りの乗客からは異様なものをみるような冷ややかな視線を浴びせられたのであった。 こうして、初めての南アルプスの沢遡行ではあったが、大きな問題もなく成功裏に終了することができたのであった。赤石沢は、沢登りの醍醐味と魅力を充分に味わわせてくれる素晴らしい沢だと思う。沢登りが好きな諸氏には是非ともお勧めしたい場所である。 最近の赤石沢遡行の記録を見ると、沢の途中にダムが建設されているようだが、僕らが遡行した時は、そんなものはなかった。砂防ダムだと思われるが、大自然あふれるこの山深い沢に、人工的なものが有る様を想像すると、少々残念な気持ちである。ほんとうにこのような場所に堰堤など必要なのかと首を傾げたくもなる。 なお、老婆心ながら、赤石沢のような壮大な沢遡行は、危険な箇所も多く、単独での入山はすべきでない。色々な状況を考えると、少なくとも三人以上のパーティで入山されることをお勧めする。沢の水量にもよるが、中には急流下の徒渉(沢や川を歩いて渡ること)や、危険な高巻きなどを強いられることもあり、安全確保の為のザイルによるビレーは必須である。 |
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赤石沢ってどこにあるの? |
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