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ハシゴ谷乗越付近(多分)よりの剣岳 |
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実のところ、この山行記をUPしようかどうか迷った。というのも、手元に何枚かの写真は残っていたものの、そのほとんどの思い出が僕の記憶から消え去っていたからだ。初めての剣岳だというのに何ということだろう。だから、行動の詳細はそのつもりで読んで頂きたい。
僕は、登山を始めて以来、剣岳には特別の感心を抱いていた。時々、山岳誌の紙面で紹介されるこの山を見て、何て素晴らしい光景なんだろうと常々思っていた。特に、池の平や仙人池からのダイナミックな剣岳の姿は素晴らしかった。
そこで、同じ時期に山岳会に入った同僚と二人で、土日を利用して行くことになった。僕の記憶では、当初、仙人池に行く予定だったように思う。既に、立山黒部アルペンルートが開通していたので、剣岳へのアプローチも楽だ。扇沢からトロリーバスで黒部ダムに到着する。ここは、黒四ダムが出来る前は、秘境中の秘境だったところだ。それが今ではいとも簡単に文明の利器で来られるのだ。
黒四ダムの上から一気に黒部川下流に降りる。背後を見上げれば、黒四ダムがもの凄い放水をしており、その水しぶきが体に降り注いでくる。しばらく黒部川を下り、途中より内蔵助谷に入る。内蔵助平を経て、ハシゴ乗越まで来ると、目の前に剣岳の優美な姿が広がってくる。見るからにダイナミックで男性的な山だ。この日は真砂沢ロッジ横までとし、ここで幕営する。
翌日は朝から深い霧がたちこめていた。当初の予定では、ここから仙人池に行く計画だったが、この霧では行っても仕方ない。予定を変更して、剣沢雪渓を登り、くろゆりのコルに出て、様子を見ることにした。3時間ほどの登りで稜線上に到着したと思う。
ここから僕の記憶はプッツリと切れてしまっている。正直なところ、剣岳山頂に登ったかどうかさえ、記憶していないのだ。頂上での写真も残っていない。だから、ひょっとして、剣岳には登っていないのかもしれない。
情けない話だが、どうしても思い出せない。20年もの歳月は、人間の記憶をこんなにも消し去ってしまうのかと、少々複雑な心境である。
そして、僕らは室堂のバスターミナルに降り立った。バスターミナルといっても、標高2400メートルほどもある高地である。こんな高所まで文明の利器が来ていると、楽には楽なのだが、何か調子が狂ってしまう。まして、ハイヒールを履いたご婦人方や背広姿の紳士がいてはなおさらである。
ここまでくれば、長居は無用だ。文明の利器を乗り継いで、早々、扇沢に降り立った。
この山行中、一番印象に残ったのは、稜線近くで念願の雷鳥に出会えたことだ。まだ冬に向けての衣替えはしていなかったが、かなりの至近距離で見ることができた。 |