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西黒尾根森林帯をラッセル |
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正月合宿を控え、雪山でのトレーニングをかねて、谷川岳に行くことになった。メンバーは女性1名を含む7名だ。上野発の夜行電車に乗り込む。上越線の土合駅には真夜中の2時46分に到着する。例によって、462段の階段を上り、駅の待合室内でしばしの仮眠をとる。こんな時間だが、駅構内は登山者で満員だ。待合室に入りきれない連中は、駅構内の通路上で寝ている。昼間なら駅員さんに注意されそうな光景だが、先方も心得ており、この時間帯は野暮なことは言わない。
軽い朝食を取り、さあ、いよいよ出発だ。日帰り山行なので幸い荷物は軽い。日帰りとはいっても、特に冬山の場合は、ツエルトという簡易テントや1日程度の予備食は必ず携行する。林道を歩き終え、いよいよ西黒尾根の取り付きに入る。僕は初めてなのでこんなもんかと思っていたが、やはり今年の積雪は多いようだ。尾根に入った途端に、いきなり胸までの積雪である。我々の前には道はできていない。そう、我々のパーティーがトップなのである。山では雪をかき分けながら進むことを「ラッセル」と言う。やってみればすぐわかるが、このラッセルが案外大変なのである。胸まで潜りながらではなおさらである。トップを行く者は5分もするとクタクタになるので、順次交代しながら進むのである。
この後にも何回かここを訪れたが、この時ほどの積雪量にはお目にかかっていない。最近では頂上直下までいかないと、まともに雪も拝めないほど、積雪量が減ってしまっているようだ。やはり、地球温暖化のせいなんだろうか・・・。
我々が日黒尾根に取り付いてから、何パーティーかが我々の後に続いていたが、誰も我々を抜いて前に出ようとする者はいない。彼らもラッセルの辛さを知っているのだ。僕は心の中で、「ここまで来て抜かれてなるもんか」とつぶやきながら、意地になって登っていた。
尾根に取り付いてから6時間半が経過し、やっとの思いで、谷川岳山頂にたどり着いた。風が強くて寒いが、快晴なので気持ちが良い。予定では茂倉岳経由で土樽に下る計画であったが、ラッセルなどで予想以上に時間を費やしてしまった為、計画を変更して天神尾根を下り、天神平スキー場に出ることにする。この天神尾根を下山中、我々は、突然の表層雪崩に巻き込まれてしまったのである。この雪崩にメンバー数名が巻き込まれた。僕も足もとを突然すくわれ、数十メートル流されたが、比較的小規模な雪崩だったので幸い怪我は無かった。流されながら僕は一生懸命泳いだ。泳がないと雪の下に埋もれてしまって、下手をすると窒息死することもあることは知っていた。そして、気が付くと、雪崩はおさまって、僕は上半身が雪の上に出ていた。「あ〜、助かった〜」としばらく呆然としていた。周りを見渡すと流された皆も全員雪の上に出ていた。
ちょっとしたハプニングはあったものの、この後、全員無事に天神平スキー場に到着し、ここよりロープウェイで土合に下り立つことができた。 |