宇宙空間など空気の無い真空中では、電波のエネルギーが衰えることはありませんので、どこまでも果てしなく伝わっていきます。このことは、地球上の空間でも原則としては同じです。でも、電波は伝わる時に徐々に拡がっていきますので、どこで測っても同じ電波の強さが得られる訳ではありません。
図4−1を見てください。図の放射源からあらゆる方向に電波が出ているとします。図はこのうちのある方向のみを抜き出して書いていると思って下さい。放射された電波は伝わると同時に周りに拡がっていきます。電波の放射源から距離「r」離れた所の電波の密度を「S」とします。ここからさらに距離「r」離れた点、即ち、2倍の距離の点の電波の面積は、先ほどの4倍(4S)になっていることがわかるかと思います。
即ち、同じ面積(単一面積)当たりで見ると、距離が2倍になった点の電波の密度(エネルギー)は1/4に薄くなっていることになります。この電波の密度のことを「電力密度」と言います。単位はW/uで表します。このように、単位面積当たりの電力密度は距離の二乗に反比例して減少する性質を持っています。 |
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図4−1 電波の伝わる様子 |
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ところで、あらゆる方向に拡がる電波のエネルギーすべてを捉える(測定する)ことは不可能に近い話です。一般に電波を捉える(測定する)にはアンテナが用いられます。皆さんの家の屋根に付いているテレビのアンテナもその為のものです。このアンテナは放送局から送られてくる放送電波のエネルギーすべてを捉えている訳ではありません。あくまで、アンテナがおかれた空間に存在する電波を捉えているに過ぎません。ですから、放送局から遠くなればなるほど、アンテナを通じてテレビに入ってくる電波の信号は弱くなります。
先ほど、電波のエネルギーを表すのに「電力密度」という言葉を用いましたが、これとは別に「電波の強さ」を表すのに、「電界強度」という言葉が使われます。単位は「V/m」で表します。細かな説明は省きますが、電力密度P(μW/cm2)と電界強度E(V/m)の間には次の関係が成り立ちます。(単位に注意して下さい。)
P = E2 / 3.77
E = √3.77・P
この式をもとに、電波の放射源から、ある距離離れた地点での電力密度を基準として、ここからの距離と電界強度の関係を比較してみると図4−2のようになります。このことから、距離が倍になると電力密度は1/4になりますが、電界強度は半分になることがわかります。即ち、電波の強さを電界強度で表した場合、その値は放射源からの距離に反比例して減少するということになります。 |
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距離 |
電力密度(uW/cm2) |
電界強度 (V/m) |
放射源から100m離れた地点(基準) |
26.525 |
10 |
放射源から200m離れた地点 |
6.63125 |
5 |
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図4−2 電力密度と電界強度の関係 |
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本ページの冒頭で、電波のエネルギーは地球上の空間でも原則として衰えることはないと申し上げました。なぜ「原則として」と申し上げたかですが、地球上には様々な構造物や物質があります。電波から見たこれらのものを「媒質」と言いますが、電波を反射するものから、逆に電波を吸収するものまで様々な媒質が存在します。ですから、宇宙空間のように、電波の強さ(電界強度)は必ずしも距離に反比例するとは限りません。また、地球上の上空には電離層というものが存在し、周波数によって異なりますが、本来は直進する電波でもこれら電離層の影響を受けて屈折したりもします。このように、地球上では複雑な伝わり方をしますので、詳しいことについては別のコーナーで説明したいと思います。 |