Vol. No. 3 2001.12.01 upload
マルコーニってだあれ?
■無線通信の先駆者「マルコーニ」
 今では誰もが携帯電話を使用する時代になりましたが、この携帯電話も無線通信の一つです。電波を通信に応用した先駆者はマルコーニ(伊、1874〜1937年)です。彼はイタリアの裕福な家庭に育ち、20才の時、電磁波を発見をしたヘルツの書物に出会い、この火花放電で通信することを思いついた。そして、英国リバプール大学の教授であったロッジが考案した、高周波電流を検知するための「コヒーラ検波器」というものを使って、見事に約2kmの無線通信を成功させたのです。時は1895年のことでした。

 その後、1901年には、イギリスから約3200km離れたアメリカのセント・ジョーンズという港町との間で、無線通信を成功させました。ヘルツの実験からわずか13年後の出来事です。
■マルコーニの実験を再現してみよう
 マルコーニが行った実験に近いものを、身近な物を利用して作ってみました。回路は図1の通りです。左側上の黒い装置が高圧を発生する圧電素子です。これは使い捨てライターに使っていたものを流用しました。ここから発生した高い電圧が2つの銅板で作られた間隙を経由して、もとの発生部に戻ってくる仕組みです。圧電部を押すと、銅板の間隙で火花放電が起こり、同時にこの部分より電磁波が発生します。実際に製作したものを写真1に示します。

 図1の右側が電波受信器(コヒーラ検波器)です。実際に製作したものを写真2に示します。先ず、厚紙の上にアルミホイールを貼ります。この中央部を5mmほど切り離します。そして、片方に電池のマイナス側(写真では左側)を接続し、電池のプラス側はLEDを通してもう片方のアルミホイールに接続します。そして、切り込みを入れた中央の間隙部に、丸めて玉にしたアルミホイールを積みます。これで検波器が完成です。

 検波器から少し離したところに電波送信器を置いて、スイッチを押して火花放電を発生させます。すると、どうでしょう。線もつながっていないのに電波受信器のLEDが点灯します。

 原理を説明します。検波器に使ったアルミホイールの表面は薄い酸化膜で覆われている為、軽く接触した状態では電気を通しません。ところが、電磁波が到来すると、アルミの中の電子が動かされて、表面の酸化膜が一時的に破壊し、電流が流れLEDが点灯するという訳です。検波器を載せた厚紙を少したたくと、アルミの玉の向きが変わり、再び酸化膜が電流を通さなくなり、LEDは消えます。アルミ玉の他にも、10円玉、画鋲、クリップなどで試してみましたが、すべて同じように検波器として動きました。
図1 実験した回路
 
写真1 製作した電波送信器
※圧電素子は高圧を発生します。圧電素子の電極部および間隙の放電部分などに触れると
感電しますので、製作される方はくれぐれも注意して、ご自身の責任で行って下さい。
写真2 製作した電波受信器(コヒーラ検波器)
■コヒーラ検波器とは・・・
 コヒーラ(Coherer)とは「密着する」という意味です。フランスのブランリーが1891年に金属粉の電導性の研究をしていた時、ニッケルの粉が直流では電流を通さないが、高周波では粉が互いに密着して電気を通す現象を発見しました。これを利用して、イギリス・リバプール大学教授のロッジが高周波電流を検知する為の検波器を考案しました。これがコヒーラ検波器と呼ばれるもので、ガラス管にニッケル粉が密閉された単純な構造です。高周波により一度密着したニッケル粉は、高周波電流が流れていなくても密着状態を保つ性質を持っており、軽く叩くと元のバラバラの状態に戻ります。この検波器は1894年に発表され、1906年にピカール(米)がシリコン(鉱石)検波器を発明するまでの10余年、検波器として使用されました。
■関連リンク
国立科学博物館(情報世紀の主役たち、情報通信技術のあけぼの、無線通信のページ)
郵政研究所(マルコーニと無線通信のページ)
US. Marconi Museum
Marconi Calling
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