Vol. No. 17 2002.10.12 upload
EMCってなあに?
 電波関連などの分野では良く使われる言葉ですが、一般にはあまり馴染みの無い言葉かと思います。それではEMCって何でしょう? EMCはElectromagnetic Compatibirityの略語です。日本語では電磁気両立性とか電磁的両立性と言われています。といっても、何が何だか判らないという方の為にもう少し判りやすく説明します。

 図1は説明のための一例です。携帯電話とテレビがあるとします。皆さんが携帯電話を使う時は、携帯電話のアンテナから通話の為の電波が発射されます。この電波は本来であれば電話会社の中継局だけに届けば良いのですが、そうはいきません。送信された電波はありとあらゆる方向に発射されてしまいますので、近くにあるテレビにも届いてしまいます。テレビからするとこの電波はもちろん不必要なものですが、万が一、この電波が原因でテレビの画面に縞模様が現れたり、スピーカから雑音が聞こえてくるとしたらどうでしょう。その程度にもよりますが、人によっては不快感を感じ、ひいては苦情に発展するかもしれません。

 この場合、電波を出している携帯電話が悪いのか、それとも雑音を出すテレビが悪いのか、どちらだと思いますか? 結論から申し上げますと、その原因をどちらか片方に押しつけるのは難しい問題です。携帯電話は周りの電気製品に迷惑をかけることなく必要最小限の強さの電波で機能しなければなりませんし、テレビも少しくらいの電波では妨害を受けない程度の能力を持っていなければなりません。即ち、この両者はお互いが正しく機能する為に電磁的な合意点を見つけなければならないということです。このように、お互いが相手に迷惑をかけることなく、共存していける様をEMC(電磁両立性)と言う訳です。

図1

 ここでは、携帯電話とテレビを例にあげて説明しましたが、EMCは何もこの両者に限った話ではありません。パソコンとテレビ、冷蔵庫とラジオ、自動車とカーラジオなど、電気・電子部品を搭載したあらゆる製品の組み合わせにおいて言えることです。

 このEMCを実現する為に、電気・電子製品から発せられる不要な電磁波は、その大きさがある値を超えないことが定められており、今では多くの国で法律により規制しています。また、電磁波の妨害を受ける側に対しても、ある程度の電磁波では誤作動しないことを定めた規則も存在します。この電磁妨害からの耐性のことを専門用語でイミュニティ(米国防関係ではサセプタビリティ)と言います。イミュニティは製品の品質の一部であるので、法律が関与すべき問題ではないとの根強い議論もありますが、EUでは1995年より法律によるイミュニティ規制を実施しています。

 携帯電話や無線LANに代表されるように、最近では電波を利用した身近な製品が増えています。電気製品のEMCは一般のユーザにはあまり関心事ではないでしょうが、製品を世に出すメーカにとっては重要なテーマの一つになっています。
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