Vol. No. 15 2002.03.17 upload
地球の磁極反転の怪
 私達が住んでいる今の地球には、図15-1に示すように、北極にS磁極、南極にN磁極があります。この性質のお陰で我々は地球上で方位を容易に知ることが出来る訳です。私はこの磁極は昔から不変だと思っていましたが、様々な書物を読むにつれ、どうもそうではないらしいことがわかってきました。約45億年前に地球が誕生して以来、今日に至るまでの間、この磁極が何度も反転しているそうです。即ち、北極がN磁極、南極がS磁極の時代もあった訳で、これを何度も繰り返してきたということです。このことを知った時、私にとってはかなりのカルチャーショックでした。(爆)

図15-1 現在の地球の磁極

 幸か不幸か、人類が地球上に誕生した約200万年前から今日に至るまでの間は、この磁極反転は起きていないそうです。即ち、人類はこの地球の磁極反転をまだ一度も経験していないのです。

 では、人類が誕生する前に磁極の反転が起こっていることがどうして判るのでしょう。その理由を簡単に説明します。まず、海底に深々と中空のパイプを差し込み、沈殿物の層を円筒状にくり抜きます。この地層に含まれる塵(チリ)や細片の多くは磁鉱石(マグネタイト)です。これらはミクロの磁気を持っており、静かに海底に沈んでいくうちに、コンパスのような動きを始め、すべてが磁極の北極方向を指し示して沈殿します。海底から採集した地層の各層に見られるこの磁鉱石の塵(チリ)が指し示す方角を測定することで、当時の地球の磁場の方向が判定できる訳です。

 この磁極の反転はゆっくりと進み、新しい磁場の方角が確立するまでに、少なくとも1万年以上の年月がかかっているそうです。また、さらに興味深いことに、この磁極の反転した時代に、多くの生物が絶滅していることもわかってきています。但し、それらの生物が絶滅した直接的原因が磁極の反転にあったのかどうかまではわかっていません。

 いずれにしても、生物の絶滅と地球の磁極反転とは何らかの関係があるのは間違いのないことのようです。大昔の生物が絶滅に至った直接的な原因として、彗星衝突説を唱える学者もいれば、磁極の反転時に太陽からの強い放射線にさらされた説を唱える学者もいますが、いずれも推論の域をでていません。最も新しいところでは、地球上の恐竜が絶滅した白亜紀(1.4億年前〜6400万年前)に磁場反転が起こっているそうです。

 我々が住むこの地球上の磁場は、人類にとって有害な太陽エネルギーの攻撃から地球上を覆い守ってくれる保護層でもある訳で、仮に地球上の磁場が無くなってしまったら、おそらく、人類も含めて地球上の多くの生物は、生きてはいけないと思います。最後になりましたが、そもそも、なぜ磁極の反転が起こったのか、何がそうさせたのかなどのメカニズムは、残念ながらまだ解明されていません。
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