結論から言いますと、電子レンジは電波の性質を利用して食品などを温めるようになっています。電子レンジの中には、マグネトロンと呼ばれる周波数の高い強い電磁波を発生する装置が組み込まれています。使用されている周波数は2450MHzで、これは1秒間に24億5千万回という振動数です。このマイクロ波は金属に当たると反射し、プラスチックやセラミクスなどは透過する性質を持っています。
では、どうして食品だけが温かくなるのでしょうか。それは食品中に含まれている水分の分子がマイクロ波によって振動し、分子同士がこすれあうことで摩擦熱が発生し、その結果として食品が温まるという訳です。なお、金属は電波を反射する性質をもっています。危険なので電子レンジの中に金属は入れないようにしましょう。
昔、学校で習ったことですが、分子について少しおさらいしておきましょう。水(H2O)の分子は図10-1で示すように、水素の原子2個(H2)と酸素の原子(O)1個が組み合わさって出来ています。また、原子は図10-2で示すように、プラスの電気をおびた原子核と、マイナスの電気をおびたいくつかの電子から出来ています。
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図10-1 水の分子構造 |
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図10-2 原子の構造 |
■電子レンジの歴史
電子レンジはいつ頃登場したのか、少し調べてみました。電子レンジに使用している電磁波を発生するマグネトロンは、もともとは軍事目的で開発したマイクロ波レーダー技術がもとになっています。このマグネトロンは米国のハルが1921年に発明したものです。そして、第二次世界大戦の翌年(1946年)に、米国で初めてマイクロウェーブ・オーブン
Microwave Ovenという名称で、電子レンジが発売されました。日本では1961年に「電子レンジ」の名称で市販され始めたようです。
ちなみに、日本で使われている電子レンジという名称を英語に直訳しますと、Electronic
Rangeですが、この名称はおそらく米国では通じないと思います。米国で使われているマイクロ波オーブンという名称が原理からして正しい名前かと思います。
■ネコの災難
少し前の話になりますが、米国でこんな事件がありました。ある女性が飼い猫を洗って、その毛を乾かそうとしてネコを電子レンジに入れました。で、そのネコは、当然ですが天国に行ってしまいました。そして、その女性は電子レンジの取扱説明書には「ネコを電子レンジの中に入れてはいけない」とは書いていないとして、電子レンジのメーカに損害賠償を訴えました。たしか、そのメーカは敗訴したと記憶しています。
日本ではちょっと考えられないことですが、多民族国家のアメリカを象徴するような事件です。今、私達が電気製品を買うと、取扱説明書の最初のほうに、読みたくもない注意書きが何ページにも渡って書かれていますが、こういう事件を聞けば、その理由もおわかり頂けるかと思います。 |